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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐 

 幼い日、幸せだった頃の記憶が切なく甦る。父の膝の上で聞いた話の数々、母は好き放題に遊び暮らして、千汐には見向きもしなかったけれど、父がいて、優しい乳母がいた、あの日。
「浜木綿―、千汐の親父さんの生まれ故郷には浜木綿が咲くのか?」
 興味津々といった顔で問われ、千汐はこくりと頷いた。

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