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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐 

それで、はじめて生まれた娘に千汐って名前を付けたんだって話を聞いたことがある。おとっつぁんの育った家が浜辺の近くにあって、いつも家の中にいても波の音や、潮の香りがしたって、おとっつぁん、いつも懐かしそうに話してた。浜木綿の群れ咲く海辺に立って、いつまでも潮の香りをかぐのが大好きだって」
 話している中に、熱いものが込み上げた。

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