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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第10章 花いかだ 其の参

 弥助はおれんの手から簪を取ると、そっとその豊かな黒髪に挿してやった。
「弥助さん―、ありがとう。あたし、本当に何て言って良いか。宝物として大切にします」
 おれんは涙ぐんでいる。
 弥助は笑った。
「そんなに言って貰えるほど、たいそうな代物じゃねえよ。それに所帯を持ったら、幾らでも作ってやれるしな」
 弥助は笑いをおさめると、真顔になった。

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