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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第10章 花いかだ 其の参

「じゃ、また」
 片手を上げ出ていこうとすると、背後からおれんの心配そうな声が追いかけてくる。
「一人で帰られますか? 何なら長屋まであたしが送っていきますよ」
「そんなことをして貰ったら、今度はまた、俺があんたをここまで送り届けなきゃいけなくなる。どこまでいっても、イタチごっこだ」
 屈託なく笑う弥助を、おれんはそれでもまだ不安そうに見つめていた。
「心配しねえでくんな。俺は大丈夫だから」
 もう一度おれんを安心させるように笑いかけ、今度こそ弥助は店の外に出た。

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