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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

 立ち上がろうとするおれんを、弥助は手で制した。
「俺のことなら構わねえでくんな。今夜、ここに来たのは、酒やつまみ目当てじゃなくて、お前さんがその後どうなったか気になってたからなんだ。とりあえず、騒ぎになるようなことが起きなかったのなら、それで良い」
「嬉しい。弥助さんがあたしのことをそんな風に気にかけて下すっただなんて」
 臆面もなくそう言って歓ぶおれんの反応が単なる客への社交辞令と知りながらも、思わず頬が緩んでしまう。

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