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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

「済みませんね、何だか、すっかり暗くなっちまって。もう止しましょうよ、こんな話を続けたって辛気臭くなるばかりだもの。それに、お料理も冷めちまいましたね。お豆腐、もう一度温め直してきましょうか? さ、お一つ、どうぞ」
 おれんがいそいそとした仕種で銚子を取る。弥助は盃を持ち、おれんが並々とその盃に酒を注いだ。
「あら、いけない。お燗まで冷めちまってる。あたしったら全然気が付かなくて、済みません。今、新しいのをおつけしますから」

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