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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

 我ながら、何ともとりつく島もない。これだから、いつまで経っても女にはモテないのだと、自分でも落ち込む。
 お静が亡くなって以来、十年もの間、女房ひと筋であった自分がつい数日前にめぐり逢った女のことばかり考えている。そのことに、弥助自身は気付いていない。
「弥助―さん」
 弥助の名を何か大切なもののように呟いたおれんに、弥助は何故か焦って口を開いた。

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