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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

―止めろッ。
 普段は滅多と声を荒げたことのない父に急に怒鳴りつけられ、美空はピクリと野兎のように身を震わせた。
―おとっつぁん? どうして、そんな風に怒鳴るのよ? 私はただ、自分にできることをして少しでもおとっつぁんに楽をさせてあげられればと思って―。
 だが、弥助は皆まで言わせなかった。
―美空、父ちゃんをお前は一体、幾つだと思ってるんだ? 父ちゃんはまだ三十三だぜ?

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