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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

「いえ、それでは、あたしの気が済みません。通りすがりの見ず知らずのお方にこんなことをお話するのも何ですが、あの若旦那には本当に難儀していたのです。店の方にも何度も押しかけてくるし、こうして通りすがりに待ち伏せしていることもあるので、迂闊に一人で外も歩けません」
 おれんは心底困惑したような表情で緩く首を振る。
「そいつは大変だな。何かい、あの若旦那はあんたの店の客なのかい?」

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