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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

何を言うか、あんな乳臭い小娘なんざァ、親の言うことしかきけないような、大人しいだけのつまらねえ女だぜ。持参金をいくら持ってくるかは知らねえが、そんな娘を押しつけられるなんて、金輪際、ご免だ」
 言いたい放題の悪態をつく若旦那を、おれんと呼ばれた女は冷ややかに見つめている。
「それよりも、おれん。私たちは共に愛し合っている仲ではないか。私たちの気持ちをしっかりと説明すれば、おとっつぁんやお袋も判ってくれるよ」
 その科白に、おれんの冷めた瞳がいっそう吹雪の吹き荒れる夜のような冷たさを増す。

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