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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

 弥助は内心、独りごちた。二人のやりとりから、おおよその事情は察せられる。縄暖簾の女将に横恋慕する一途な若旦那という図式が自ずと浮かび上がってくる。
 しかし、この場合、若旦那はまるで五歳の幼児がそのまま大人になったようで、図体ばかりはでかくても、中身は世間の条理も心の機微の何たるかもわきまえない、道理の通らぬ子どもだ。

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