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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱

 他ならぬ清七自身がそうだった。三年前、おみのや太助を理不尽にも奪われた直後、清七はそうやって最も辛い時期をやり過ごしたのだ。夜、誰もおらぬ真っ暗な我が家に戻って、灯りもつけずに片隅に蹲り、膝を抱えて声を殺して泣くだけ泣いたら、明日の朝にはまた、何食わぬ顔で顔を洗い、仕事に出かけた。

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