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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱

 それでも清七は女を押さえ、耳許で〝子どもの泣き声など聞こえない〟と繰り返した。そんなことをどれほど辛抱強く続けただろう、やがて、やみくもに暴れ狂っていた女がふっと抵抗を止めた。
 花が一挙に萎れてゆくかのように、そのか細い身体から力が抜けてゆく。
 女が再びその身体を小刻みに震わせ始めた。
「お、おいッ。大丈夫か?」
 清七は仰天して、気遣わしげに女を見る。

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