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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱

―抱いて欲しいって、物欲しげな眼で俺を見てさ、縋るように自分から頼んできたんだよ。
 清七は慌てて、耳奥でこだまする男の声を振り払う。
 あの男の科白が真実かどうかなど、清七には所詮拘わりのないことだった。清七はまだしつこく聞こえてくる男の声を努めて無視して、女に言った。
「念のため、送っていこう。また、あんな、ろくでもねえ奴らに出くわさねえとも限らないからな」

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