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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第5章 恋花二つ目~恋紫陽花~壱

 悪気のない言葉の応酬ではあったが、これが全く普段の二人を知らない人間が見れば、凄まじい夫婦喧嘩をしているように見えるらしい。むろん、徳平店の人間には、毎度のこと、慣れっこになっている。
 いつもの調子で痴話喧嘩をしながら、賑やかな夕飯は終わった。これも毎度のことながら、いかにも美味そうに食べながらも、兵助の膳のものは半分ほどしか減っていない。
 向かい合ったお民の皿は空になっている。

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