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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第5章 恋花二つ目~恋紫陽花~壱

 兵太を失ってから、はや六年が経った。初めの頃は、兵助も自分もまだ若いのだから、もしかしたら兵太に代わる子を授かることができねかもしれない。そう思い、また何よりも願ったけれど、ついに子は授からなかった。
 兵助は三十を過ぎ、お民自身も二十七になった。多分、再び自分たちが子を持つことはないのだろう。最近は人の親となることは諦め、お民はいっそう世話好ぶりを発揮している。

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