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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第5章 恋花二つ目~恋紫陽花~壱

 倅を失ってから、元々面倒見の良かったお民は更に世話好きになった。もしかしたら、他人の心配をしたり世話を焼いたりすることで、倅を失った哀しみを幾ばくかでも癒やそうとしたのかもしれない。実際、近くに捨てられていた捨て子の面倒を里親が見つかるまで見てやったり、同じ長屋に住む少女が父親を失った直後、再々泊めてやったりしたし、そんな身寄りのない子どもたちの世話をすることは、お民の心の隙間を埋めてくれた。

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