
やっと、やっと…
第14章 自分を大切にするということ
「お疲れ、唯」
校門で圭介が待っている
「お疲れさま」
私はいつものように
ただの笑顔で答えた
手を繋がれないように
カーディガンのポケットに手を入れる
あかあかと色を付けたもみじの下を
圭介の話に相槌を打ちながら歩き続けた
「ねえ、圭介」
私は足を止めた
このままいつものように圭介の家には
行きたくない
「ちょっと公園に寄っていかない?」
私はなるべく落ち着いて
いつものように圭介に問いかけた
「どうしたの?
俺の家でもいいんじゃないの?」
言葉は優しいのに
目が怖い
これに負けるわけにはいかない
「たまには外もいいじゃん」
私は笑顔で言う
「そうだね、じゃあそうしようか」
圭介は私の笑顔を見て
素直に答えた
