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仙境綴~美しき仙界の王と身を捧げる少女~

第6章 三つめの物語~砂漠の鷹~

 まだかすかに身体を小刻みに震わせながらも、娘が気丈に男に頭を下げた。男は淡く微笑した。先刻の凄みは既になく、ただしずまり返った湖面のように静かな表情である。その穏やかな微笑を浮かべた様は先刻の男とは別人であった。
「いや」
 男は淡く微笑したまま、小さく首を振った。
「行くところがないのなら、私について来ると良い」

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