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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第2章 禁断の恋

 人知れず咲き、ひそかに散る花。そう謳われたごとく、後宮の女官はたとえ最下位の者でも後宮の主たる王の所有に帰することになる。現実として、王の眼に止まり、妃になることは稀有であるが、それでも、建て前上、一生身を浄く保ち、顔もろくに見ることもない王に操を立てて生きてゆかねばならないのだ。
 そのことに改めて思い当たったのか、王は夏の陽差しにかすかに眼を細めた。

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