テキストサイズ

秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第4章 心のゆくえ

 それでも明香は何も言わず、ただうつむいて、ひっそりと涙を流しているだけだ。
 大妃の傍らに控える柳尚宮が一瞬、痛ましげな表情を浮かべたが、すぐに能面のような無表情に戻った。
 堪忍袋の緒が切れたのか、大妃が甲走った声を上げた。
「可愛げのないおなごだ。そなたより美貌も教養も家柄共に勝った女官は星の数ほどもいると申すに、何ゆえ、主上はそなたのような凡庸な娘にそこまでご執心あそばされるのか」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ