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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第4章 心のゆくえ

 翌朝、明香は自室で荷物をまとめていた。元々、持参したものは何もなかった。十年前、入宮したときの明香の荷物といえば、小さな風呂敷包み一つ。
 中には数枚の着替えとお気に入りの人形だけだった。その人形は、父が買い与えてくれたもので、両親の残したものはすべて伯父夫婦に取り上げられてしまった中で、たった一つ、明香の許に置くのを許された。

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