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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第4章 心のゆくえ

 王は学問に熱心なだけでなく、武芸の鍛錬も欠かさなかった。殊に得意としたのは乗馬や弓で、狩りは好まなかった。それはただ娯楽のためにのみ無益な殺生をするのを嫌うからで、彼の生来の優しさを表している。
 最近、とみに逞しくなってきたのは、やはりそういった鍛錬の成果に違いない。
 あの胸に素直に飛び込んでゆければ、どんなに良いだろう。青年らしい逞しい腕や広い肩幅を見て、明香の胸に哀しみが押し寄せた。

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