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砂漠の月、星の姫~road to East~

第2章 第二夜【国境の月~road to east~】

「私も国を捨ててきた」
「―」
 タリムは驚いたように男を見た。
 男が乾いた笑いを浮かべた。だが、タリムは、その皮肉な表情とは相反する、男の瞳の奥に宿る淋しげな翳(かげ)を見抜いた。それは、紛うことなく、孤独の翳であった。タリムは、今しも滅びゆこうとしている故国を捨ててきた。その彼女だからこそ、彼が背負っている翳が自分と同種のものだと悟り得たのだ。

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