
最初で最後の恋
第22章 現実と向き合う
「…澪」
くんっと腕を引っ張られたかと思ったら、蓮が歩みを止めていた。
俯いたまま、顔はよく見えない。
「どうしたの、蓮?」
あたしは少し後ろにいる蓮に近づき、顔を覗き込んだ。
蓮は…
寂しくて泣きそうな子供みたいな顔をしていて。
思わず、抱き締めたくなった。
「澪といると、さ。
なんでもできそうな気がするんだ。でも…
母さんに会う自信が、今の俺にはなくって…
それでも、いつかは向き合わなくちゃいけなくて。
怖い、んだ」
必死に想いを伝える蓮。
繋いでない方の手で拳をぎゅっと作って、下唇を噛み締めて。
怖いと言うことさえも怖かったんだろう。
身長はあたしなんかよりもずっと大きいはずなのに、今は小さな子供のように縮こまって見える。
その姿が愛しくて。
あぁ、やっぱりあたしが好きになった人はこの人で良かったんだって思った。
