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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第21章 番外編第四話【轍~わだち~】

 到底七十をゆうに過ぎる老齢の女性とは思えない、そこはかとなき色香さえ滲み出るような―、よしんば、それが言い過ぎであったとしても、若かりし頃の美貌の余韻は十二分に残るものであった。
「もう今から五十年も前のことになるかしら。私が家を出た時、あなたのお祖父(じい)さまは私をここまで迎えに来て下さったのよ」
 突然の自白めいた言葉に、晶はハッとした。

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