テキストサイズ

空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦

「元気で、身体にはだけは気をつけるんだよ」
 その言葉には深い哀しみが宿っている。
 教室の戸が音を立てて開き、また閉められる。その音を幸は背後でじっと身を固くして聞いていた。つい先刻まで、浩三が座っていた椅子にそっと手を伸ばすと、固い木の椅子にはまだ人のかすかな温もりが残っていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ