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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦

「ありがとう」
 他に言うべき言葉を思いつかず幸が言うと、そのときだけ、わずかに浩三の声が高くなった。
「幸、僕は礼の言葉を聞きたいわけじゃない。心から言ってるんだよ。僕には、そして子どもたちにも君は必要だ。君がいなくなって、僕は自分がどれだけ君を愛しているか今更ながらに思い知ったんだ」
「―ごめんなさい」
 幸の声が震えた。涙が溢れて止まらない。

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