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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第8章 第三話【波の音】 予感

―綺麗。
 思わず眼を瞠った幸に、亮平はまるで少年のように得意げに言ったものだ。
―これは桜貝というんだよ。
―桜貝? 
 幸が小首を傾げる。
―この海の沖合に人魚が棲んでいるという言い伝えは幸も知ってるだろう。
 北の海はいつもは穏やかだが、時に信じられないほどの時化になることがあった。そんな時、人々は海の神の怒りだと言い、怖れた。

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