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月琴~つきのこと~

第1章 第一話【宵の月】 一

「お嬢さま、お嬢さまのお気持ちはありがたいと思います。でも、俺は下男ですから」
 静かな声音に、胸の高鳴りも止む。治助はあくまでも冷静であった。そして、その態度が何より治助の気持ちを物語っている。
「本当のことを教えて。あなたは迷惑なんでしょう? 私に好きだなんて言われたら、迷惑だから、そんな風に遠回しに断ってるんでしょう」
 眼に熱いものが滲む。小文は泣くまいと唇を噛んだ。

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