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月琴~つきのこと~

第1章 第一話【宵の月】 一

 小文は見かねて間に入った。
「うちに来てまだひと月というのなら、裏庭に迷い込んでしまったとしても不思議はないでしょう。卯之助さん、そんなに怒らないであげて」
 大店で知られる信濃屋の屋敷は広い。治助の言い分もあながち出たらめだと決めつけることはできなかった。小文に取りなされては、卯之助も引き下がるしかない。だが、卯之助にしてみれば、面白くなさそうである。

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