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月琴~つきのこと~

第1章 第一話【宵の月】 一

 小文と妙乃は二つ違いであったけれど、小文はこの妹をよく可愛がっていた。妙乃は末っ子らしく、幼い頃から甘えん坊だ。今日も妙乃にせがまれ、漸く咲き初(そ)めたばかりの桜の花を取るために樹に登った。もう少し待てば、背伸びして手を伸ばせば届くほどに桜の花はたくさん咲くのに、妙乃はそれまで待てないと駄々をこねる。

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