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月琴~つきのこと~

第3章 第二話 【月琴~つきのこと~】 一

 嘉平太の気持ちはありがたいけれど、これ以上の迷惑をおかけすることはできないし、娘もいつ戻ってくるか判らない、と。
 が、嘉平太はそれも承知の上とこれも引き下がらない。やむなく惣右衛門はこの縁談(はなし)を保留にした。小文は体調を崩したため、遠方の温泉地に静養に出したと世間体を取り繕った。小文が健康を取り戻し帰ってくるまで祝言は延期する―、こんな苦しい言い訳がいつまでまかり通るかは判らないけれど、とりあえずこうするより他なかった。

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