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最後のキス~琉球の海を渡る風~

第3章 The wind of Ryukyu~琉球の風~

 その時、藍那は悟ったのだ。
 私、王さまを好きになったんだ―。いや、多分、この時代に来て初めて彼の少し淋しげな瞳に見つめられたときから、恋は始まっていたのだ。
 王が嬉しげに語る想い出の中の女の子が自分だったら良かったのに。藍那の脳裏に一つの情景が浮かんでいた。しっかりと小さな手と手をつなぎあわせ、露店を覗く男の子と女の子がいる。小間物屋で珊瑚の簪を熱心に眺める女の子を嬉しそうに見つめる男の子。遠い日の真戸那と王であった。

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