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理想と偽装の向こう側

第14章 時限爆弾

浜辺の波が寄せてくる、ギリギリのところを小田切さんの一歩後ろから、背中を見詰めながら歩く。



髪をなびかせる波風が、気持ちいい。 



「香織~ん!」
「な~んですか~!」



ザザ…ザーン…



「このままさぁ~二人で誰も知らないところに、行っちゃおうかぁ~!」



え……。
なんて…?



「はは…そうだね~!でも、会社に怒られちゃいますよ!」



一瞬の間が空く…。



「そっか…やっぱり無理か~!はははっ!」



「はい…無理ですよ~。」



小田切さん…!



涙が、頬を伝い落ちる。



嘘でも嬉しかった…。



嘘でも全て捨ててまで、私を背負ってくれようとした言葉だけで、十分です…。



私は、左手首のブレスレットを右手で握った。



嘉之に何をされても、堪えてみせる。



「香織ん…。」



小田切さんは、前を向いたまま後ろに左手を伸ばしてきた。



「はい…。」



私は、その手に自分の指を絡めた…。



朱色の海辺は私たちごと、赤く染めていった…。




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