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理想と偽装の向こう側

第14章 時限爆弾

居酒屋を出て、マンションまで余り話すことなく、お互い微妙な空気だった。



そうだよね…いくら何の関係がなくても、あんなこと言われて…聴かされなくていいことまで、聴かされたら、疲れちゃうよね…。



でも、しばらくは会わないようにするから、小田切さんも穏やかに過ごせる様になるよね…。 



少し強がりながら、自分を奮い起たせる。



橋を通りかかりながら、川を見やると、月明かりで煌めく水面に勇気をもらう。



小田切さんとの未来が、少しでも輝けます様に…。



一歩前を歩いてる小田切さんの広い背中が、愛しく感じた。



マンションに着いて、小田切さんがドア開けてくれ、先に私を入れてくれる。
レディーファーストが、嫌味じゃないな…さりげないし。



そんなこと、朧気に思いつつ靴を脱いで、手を洗いに行こうとした時…小田切さんが後ろから私を抱き締めてきた。



な、何!?



「小田…切さん…。どうしたの?」



「香織ん…ごめんな…助けに行けなくて…。」



肩の辺りに顔を埋めながら話す小田切さんの声は、少し震えて聞こえた。



やだ…小田切さん、ずっと自分を責めてたんだ。



「小田切さんは…全然…悪くないよ。私がしっかりしてないから…。」



「恐かっただろ…。」



「恐…く…ふっ…くっ。」



小田切さんの優しさに、安堵感からか涙が溢れてきてしまう。



あぁ…この人の前じゃ、強がれない…。



「小田切さん!!」
「うん…。」



私は向きを変えて首にすがり付き、小田切さんはそんな私の身体をきつく抱き締めてくれた。



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