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理想と偽装の向こう側

第14章 時限爆弾

「香織ん!?」



私は、小田切さんに抱き付いていた…。



小田切さんの背中に腕を回し、スーツをギュッて握り、広い胸に顔を埋める。



ズルいと思われてもいい…この関係に、どこまでも溺れて、小田切さんの優しさに甘く深く沈んでいきたい。



小田切さんは、分かっているかのように、黙って抱き締めてくれた。



長い腕で私の頭も肩も包み込み、背中から腰にかけて力がこもる。



「小田切さん…。」



切なくて、泣きそうだ。



「香織ん…大丈夫だよ…。俺が居るから…。」



更に強く抱き締めてくれる小田切さんと、この腕の中に居れば大丈夫との安心感が満ちてくる。



一瞬でもいいから、今日の現実を忘れたかった。



この『舐め合い』の境地な気がした。



お互いの傷を舐め合うフリして、現実を見ない様にする…。



小田切さんは、穏やかに…甘く…ソコに私を誘う…。



私は、小田切さんとソコに堕ちる…。



不毛かもしれない…でもお互い、今は何より必要としているんだ…。



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