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理想と偽装の向こう側

第10章 信頼と疑惑

「動物や昆虫の世界だと解りやすい例えがあるわ。」
「はい!」



まだ続くのかと思うけど、このどす黒いモヤモヤがスッキリするなら、藁にもすがるな思いだよ。



「個体レベルでの自然選択に注目すると、厳しい生存競争の中で、わずかでも『利他的』な行動をとる個体は、そうでない個体よりも平均して「うまくやっていけない」と予測できるの。全ての個体が『利他的』であれば、その群に属するもの達は非常に上手くやっていけるであろうけど、中に一個体でも『利己的』な個体が混入すれば、『利他的』個体を食い物にして繁栄するであろうと…それを踏まえて!!」



長い…。
まだ、訳分からないよ~。
でも、黎子の瞳はキラキラしてる。



「遺伝子中心で考えると理解し易いのは、ミツバチの働きバチなど、社会性昆虫における不妊階層がみせる利他的な行動で、自らは子孫を残さずひたすら女王バチに献身する働きバチの行動に、どのような進化的利益があるのかなんだけど…
働きバチ自身が繁殖をし50%だけ自分の遺伝子を持った子を作るよりも、女王バチの繁殖を助けて75%の共通遺伝子を持つ妹を育てることが、遺伝子のコピーを効率的に増やすことになるのよ。つまり働きバチの行動は個体としては利他的だけど、遺伝子にとっては利己的になるの。」


「はあ…。」


やっぱり分からない…。



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