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理想と偽装の向こう側

第10章 信頼と疑惑

「出来たの!?」



不敵な笑顔を向けていた。



「あぁ、終わった。」



イーゼルに乗せた作品三枚が、小さい空間を作ってる様だった。



単独でも存在感がある。



「凄い…。」



嘉之は、後ろから私の肩を抱き締め顔を寄せてきた。
画材の匂いが、心地好く感じる。



「どうよ?」
「うん…凄い綺麗だし、温かい作品だね…。」



感動過ぎて、言葉にならず、涙が溢れてきた。



「うん…きっとみんな、こんな空間に住めたら幸せに感じるよ!」



「はは!ホントかよ。」
「本当だよ~!」



嘉之は、親指で私の涙を拭いながら



「独りだったら、こんなの描けなかったな…。」
「へっ?」



「香織…ありがとな…。」



「ううん!嘉之が、頑張ったんだよ!タイトルは?」



「Caro…。」



嘉之は囁きながら、優しくキスをした。



《Caro spazio》 



『愛しき空間』



この空間で、お互いの信頼と存在を確かめ合えた気がした…。



だけど、そんな信頼も空間も
壊すことは容易かった…。



それも…一瞬に…。



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