
S×強気で恋になる
第76章 粉雪
ビシッとスーツを着て
カウンターに座る
約束の時間はまだだったけど
遅刻したらうるさいから
仕事を定時で切り上げてここに来ていた
「待たせたな」
「・・・真ちゃんが外呼び出すのは珍しいね。家大好きなのに。純平は?純平もかと思ってた」
「あいつはお留守番。一人暮らしの練習とか言ったら、喜んでやがった。クソ犬だよまじで」
そう言って真ちゃんは
ジャケットを店員に渡して
俺の横につく
その話か
そう思いながら、俺は先に頼んでいた
カクテルを飲み干した
「にしても・・・よく許したな」
「・・・せっかく両想いっぽくなったろ?あいつ女々しいから、自由がないとイヤ!とか言いかねねーし。そーなったらあいつ頑固だからな。今のうちに無駄だってことを証明しようと思って」
「そんなうまくいくか?あいつ太田にも言ってたぞ。っーか、すげーウキウキしてたっーか・・・」
「デブは侵入できねーセキュリティあるマンションねーかな」
「ねぇだろ。隆彦とは?」
「特に何も。悠二はこの前連絡した。雅史が就職決まったって」
「そうか。雅史、淋しがってたぞ。たまには実家帰ってこいよ。あ・・・」
「なに?」
「いや、別に」
純平が隆彦と話したいって
言ってたって
言おうとして口を閉じる
純平が本当は何を考えてるのか
掴めない限り
真一に下手なこと言えない
そう思ったからだった
