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?…好き…?

第20章 出産前…

妻は…
彼女の存在は知っている…
俺の、職場の先輩職員であり、友人である、という認識だ…
実際、彼女とは、男女の関係になる以前から、友人である期間が何年もあったと思う。
その頃から妻には、彼女のことを、話していたのだ。
だから妻は…
彼女に子供がいること…
特定疾患であること…
乳癌が見つかったこと…
妊娠していることも…
知っている…
日頃から妻は、俺のシフト表を見る。
だから、彼女が何日から産休に入るか、ということに気付いていた。
彼女の産休前最後の勤務のその日、妻は…
『○○さん、今日が最後の出勤なんでしょ』
『会いに行くつもりなんじゃないの?』
『約束とかしてるんじゃないの?』
『心配なんでしょ?』
『会いに行きたいんじゃないの?』
『気になるんでしょ?』
『行けば?』
『行かないの?』
様々な言葉で、俺に詰め寄った。
浮気を疑ってるということではないのだが(とは言うものの、妻の胸の内を知る術もないが…)俺が普段から、男であれ女であれ、友人を大切にし、何かあると人並み以上に心配性で、気にかける、妻はそう思っているのだ。
しかし、彼女のことは、病気や去年流産した後の妊娠という、普通の人でも気になる様な状態であることに加え、それが、女性特有のことであるのが、嫉妬の様な感情になってしまうらしかった。
その上で、そんな詰め寄られ方をして、まさか
『行ってきます』
と出掛けるワケにはいかなかった…
何を、勝手な推測で、イラついているんだ、となだめるより他に方法が浮かばなかった。
しかも、ただイラついているのではなかった。

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