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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第26章 第二部【身代わりの王妃】 哀しみの果て

 もう、生きていたくない。辱めというなら、これ以上の屈辱があるだろうか。その身を汚されるよりもまだ耐え難い屈辱だ。他の女のの身代わりにされるために、手籠めにされてしまうとは。
 春花は小刀の鞘を払った。障子窓を通して差し込む夏の陽光に鋭い刃がキラリと光る。いつでも両班家の誇りを保てるように、この小刀は常に研いでいる。だから、小さくても切れ味は抜群のはず。
 彼女は眼を固く瞑り、小刀の刃を左手首に走らせた。ピュッと生暖かいものがそこら中に飛び散った。恐る恐る眼を開くと、真冬に花開く深紅の椿よりもなお色鮮やかな血が床から布団をその禍々しい色に染め上げていっている。

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