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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第26章 第二部【身代わりの王妃】 哀しみの果て

 泣くまいと思っても、泣けてくる。春花は布団から這い出ると、居間に行き文机の引き出しを開けた。小さな薄桃色の巾着(チユモニ)を取り出し、中から小さな小刀を出した。黒塗りの柄には螺鈿細工で桜花が象嵌されている。
 両班の息女は皆、物心ついたときから、常に小刀を携帯するように躾けられる。それはもし、その身を辱められるようなことがあっときは自ら生命を絶てという厳しい教えによるものである。

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