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 巡 愛 

第3章 もう一度……


『こんな時間に突然すみません。どうしても未明さんに聞いてほしくて……』

 そんな前書きに続いていた彼女の言葉に、私は目を疑った。

 穏やかな言葉でありながら、しかし激しく自分を責めていた。

 結婚して以来初めて主人を拒んでしまった、と。

 今夜、時を同じくして、はじめて妻に拒まれた私と夫を拒んだ彼女――果たしてこんな偶然が起こりえるだろうか。

「カンナ……さん?」

 私はどうしようもない胸騒ぎに過去のカンナさんとのやり取りを1から読み返してみたのだが、子供の年齢や得意料理、3月上旬だという誕生日も考えてみたら妻と一緒で、大切な日だといっていたのは私と妻の結婚記念日と一致していた。

 「カンナさん」は、自分の妻である「環奈」なのか。

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