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君のため。

第92章 ◇存在したかもしれない時間◇

彼の部屋での最初で最後の夜。



明け方に、



…帰るよ。



って言った私に



言葉じゃなくて、



指で引き留めるあなたは



やっぱりヤラしくて、



でも、すごくあなたらしくて。



でもその行為にもう愛はなくて。





もう少しあなたが我慢してくれていたら、



私はこの場所であなたともっと過ごせたのになって。



もっと楽しいドキドキする時間を一緒に。



無理だったんだけど。仕方ないんだけど。



もしかしたらそこに存在していたかもしれない私達の時間のことを思うと、



泣きそうになる。



だから、もう、考えるのやめればいいのにな。私。

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