テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第18章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 祖父の願い

「お嬢さま(エギツシ)、私でございます」
 キョンシルは慌てて立ち上がり、入り口に行く。眼の前に立つ人物を見て、愕きに眼を見開いた。
「あなたは―」
「お久しぶりでございます、お嬢さま」
 丁寧に頭を下げた痩せぎすの男は、何と崔一載(チェ・イルチェ)の屋敷で執事を務めている家僕であった。下の名は知らないけれど、確か姓は馬(マー)氏だった。初めて見た時、馬を彷彿とさせる縦長い顔が印象的だったので、馬という姓がぴったりのように思えて瞬時に憶えられた。
「馬(マー)執事(ソバン)ですね」
「私ごときの名を憶えて頂いて、光栄です」
 四十前後と思われる忠実な執事は、嬉しげに顔を綻ばせた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ