
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第3章 旅立ち
「悪かった、別にからかうつもりはなかった。ただ、そなたが心にもないことをもっともらしい貌で言うから、つい、な」
トスは笑いをおさめ、表情を引き締めた。
「共に行かないか?」
刹那、キョンシルは虚を突かれ、トスの貌を茫然と見つめた。
「ソンニョの想い出のある都にいるのは、俺にもそなたにも辛すぎる。ならば、いっそ、ほとぼりが冷めるまで都を離れた方が良いのではないかと、ふと思ったんだ」
「私がおじさんと旅に出るですって、冗談―」
言いかけたキョンシルに、トスの黒い瞳がしきりに訴えかけていた。トスは心底から義理の娘を案じてくれているのだ。
本音を言えば、行きたかった。ましてや、トスの方から共に行こうと言っているのだ。行きたくないはずがなかった。
トスは笑いをおさめ、表情を引き締めた。
「共に行かないか?」
刹那、キョンシルは虚を突かれ、トスの貌を茫然と見つめた。
「ソンニョの想い出のある都にいるのは、俺にもそなたにも辛すぎる。ならば、いっそ、ほとぼりが冷めるまで都を離れた方が良いのではないかと、ふと思ったんだ」
「私がおじさんと旅に出るですって、冗談―」
言いかけたキョンシルに、トスの黒い瞳がしきりに訴えかけていた。トスは心底から義理の娘を案じてくれているのだ。
本音を言えば、行きたかった。ましてや、トスの方から共に行こうと言っているのだ。行きたくないはずがなかった。
