
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第15章 王宮という名の伏魔殿
「あれは、どなたなの?」
声を低めて問えば、臨尚宮も小声で応えた。
「温嬪(オンビン)さま(マーマ)、恭(コン)嬪(ビン)さま(マーマ)にございます」
「温嬪さまというと、偉いお妃さまなのよね?」
「さようです。嬪というのは、お妃の中でも最も位が高く、王妃さまに準ずる位でございますゆえ」
現国王俊宗には正室、つまり王妃がいない。世子時代に婚約した両班家の令嬢がいたのだが、夭折してしまった。以後、周囲が何度となく結婚を勧めても、若い王はけして首を縦に振らなかった。
そのため、朝廷の大臣たちは皆で話し合い、やむなく相応の両班家から数人の娘たちを選び、王に側妃という形であてがった。娘たちはいずれも、三政丞(チヨンスン)(領議政、左議政、右議政)や議(イ)政府(ジヨンプ)の官僚、または六曹の判(パン)書(ソ)などの高官の娘である。
声を低めて問えば、臨尚宮も小声で応えた。
「温嬪(オンビン)さま(マーマ)、恭(コン)嬪(ビン)さま(マーマ)にございます」
「温嬪さまというと、偉いお妃さまなのよね?」
「さようです。嬪というのは、お妃の中でも最も位が高く、王妃さまに準ずる位でございますゆえ」
現国王俊宗には正室、つまり王妃がいない。世子時代に婚約した両班家の令嬢がいたのだが、夭折してしまった。以後、周囲が何度となく結婚を勧めても、若い王はけして首を縦に振らなかった。
そのため、朝廷の大臣たちは皆で話し合い、やむなく相応の両班家から数人の娘たちを選び、王に側妃という形であてがった。娘たちはいずれも、三政丞(チヨンスン)(領議政、左議政、右議政)や議(イ)政府(ジヨンプ)の官僚、または六曹の判(パン)書(ソ)などの高官の娘である。
