テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 王の御前を逃れるように退出し、キョンシルはうち沈んで、殿舎への帰り道を辿っていた。
「淑媛さま、どこか、ご気分でも悪いのですか?」
 傍らから臨尚宮が気遣わしげに訊ねてくる。
「大丈夫よ、心配しないで」
 臨尚宮に余計な心配はかけたくない。キョンシルは無理に笑顔を拵えた。
「されど、お顔の色が悪うございます」
 なおも案じ顔の臨尚宮がハッとした顔になり、キョンシルに耳打ちした。
「あちらからお妃さま方がいらっしゃいます」
 声に促され、前方を見る。確かに賑々しい一団がこちらにやってくるようだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ