
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか
少し遠くはなるけれど、知った人に出会わずに行くには、外の道を通るのが最も安全といえる。塀の側の道を早足で歩いていると、細い道の前方から女性らしい人影が近づいてくる。外套を目深に被り、静々と歩く姿はどう見ても、良家の婦人といった出で立ちだ。しかし、それにしては付き従う伴人は見当たらなかった。
寺詣での帰りなのかもれしない。キョンシルは軽く頭を下げて女性とゆき過ぎようとした。と、玲瓏とした声がキョンシルを引き止めた。
「もし」
初めは誰か別の者を呼んでいるのかと思ったが、キョンシルの他には通行人はいない。
寺詣での帰りなのかもれしない。キョンシルは軽く頭を下げて女性とゆき過ぎようとした。と、玲瓏とした声がキョンシルを引き止めた。
「もし」
初めは誰か別の者を呼んでいるのかと思ったが、キョンシルの他には通行人はいない。
